いつでも二階席

宙組の女A

18世紀のドイツ ~群盗~

さて、先日宙組DC公演 群盗 行って参りました。

 

my初日にしてmy楽という悲しさ。まぁ嘆いていてもチケットが1枚しかないんだから仕方ない。Twitterのネタバレレポを必死に我慢し、「ひたすら泣ける」ということのみを知って臨んだ群盗。

結論から言うと泣いた。星逢一夜並みに泣いた。

何処に泣けたか、何故泣いたか、そんなことはどーだっていい。カールが、アマーリエが、フランツが、登場人物みんなが必死に生きた結果に泣いた。

 

前置きはそこそこにし、頭から思い出してみる。

 

【1幕】

キキちゃんの開演アナウンスを聞きながらやっぱチワワっぽいわ〜などという腑抜けた想いを抱きつつ緞帳が上がる。

 

プロローグ。

想像とは180度どころか540度くらい違う、まさかのロック調の曲。そして序盤からバチバチに入る手拍子。嘘だろおい………と思いつつもガンガン踊っているのを目の前にすると目が足りない。

イチオシまいあちゃんの手足の長いこと!ダンスが上手いのは分かりきっていることだが、男役の中にたった1人の娘役だとしても全く引けを取らない完璧な踊り。やはり素晴らしい。

そしてセンターでスポットを浴びるキキちゃん。え、あのチワワみたいでゆるっゆるの関西弁で喋る人どこいった、黒いお衣裳が似合うんだな、これが。そして立ち姿の美しさ。はい、完璧!!!!!!

 

とか思っているうちにあれよあれよとプロローグが終わり、こってぃ演じるヴァールハイトが登場。

私は彼(?)に対して気弱なイメージが大きいのだが、それを跳ね除けるようなオーラで掴みはバッチリ。爽やかで良い。

 

そして少年カールと少女アマーリエが登場するのだが、上手い、上手すぎる。え、何?今回研7以上しか出演してないんですか?とツッコミかけた。いや、心の中ではツッコんだ。それほどに上手い。ナウオンでキキちゃんが最初はどうなることかと思っていた、と言っていたが、舞台ではなんの心配もなく観れる。芝居も歌も良すぎる。

開始10分で下級生の上手さに殴られてたらもう1人出てきた。そう、少年フランツである。こちらもまぁ上手いこと。何なの??宙組

余談だが、カッコウの笛をりんきらが投げた時の効果音に笑ったのは私だけ?めっちゃおもろいんですけど……

 

んでもってやっとこさ成長した3人が登場。

キキちゃんはこういう”おぼっちゃま”キャラが似合うんだな。爽やかだわ。

もえこはビジュアルで殴ってくる。イケメンかよ(知ってる)

まぁこのお二方、出てきた時からフラグ立ちまくっている。大体兄弟でカインとアベルの話出るなんて物騒すぎる。もえこ〜頑張るんだ〜お兄ちゃんに負けるな〜 

 

そしてカールが去った後、フランツが思わずこのままカールが帰って来なければ…という内容を口走ってしまう。

口走ってしまう、と書いたがフランツにとってカールは超えられそうで超えれない壁のようなものなのかな、と。ロレンツォとジュリアーノとはまた違うものだけれど。

 

ここで特筆すべきはわんた演じるヘルマンでしょう!!!

いやー…………この方研何でしたっけ?? え、研7????嘘だぁ〜どうせ研10以上でしょ????

ってなりました、ハイ。それほどヤバイ奴でした。もう出てきた時から怪しい。絶対何か企んでるんでしょ感が凄い。危険な奴だ。

 

やっとこさ大学へ進学し、仲間と出会う。

グントーズ、どこから行きます?もうさ、キャラが渋滞してるんだよ!!!!

穂稀くんのシュヴァイツァー。理屈っぽいけど憎めない。

あられ演じるラツマン。笑顔がキュートで可愛い。

雪輝くん演じるシュフテレ。色んなアドリブかましてた。面白い!

なつくんロルラー。ナルシストっぽくて絶対誰かにツッこまれる。

まぁ文字にするだけで濃いんですが、これまた揃って歌の上手いこと!雪輝くんなつくんとかこの前初舞台ですよね??恐ろしい……

そして、なっつのシュピーゲルベルク。荒っぽくていかにも酒場で働いてるという雰囲気。でもその荒っぽさの中でまいあちゃん演じるリーベに対する優しさや愛が垣間見れる。序盤は良いカップルだったのよ…!!

このグントーズたちがソロをそれぞれ歌うんだけど、まぁ上手いんだ。これが。低音も難なくこなしてしまう。何度でも問う、研何ですか?

彼ら(彼女も)は理想に向かう1つの方法として"群盗"になる事を選択する。その事が正しい道だったのかと聞かれれば、私には答えられない。

しかし彼らはその道を選び、ひと時は歓喜の歌で迎え入れられるほどの存在に。この時の第九がまた良いんだな…!今回有難いことに前方席での観劇だったので、舞台上の声がストレートに聴こえてきた。とてつもなく力強く、明るい声だった。

 

そんな絶頂にいた彼らはきっと"死"については考えていなかっただろう。いや、正しくは自分たちの行動の結果死を招くことは全く考えていなかったはずだ。そんな彼らが初めて直面した死は悲しくも1番幼いグリムの死だった。

湖々さくらちゃん演じるグリムは姉のリーベを守るために体を張れるような幼いながらに強い人間だった。そして誰よりも"群盗"の意義を理解していた。

酷いことだが幼い彼の死がカールたちに現実を見させ、今後の彼らの行く末を決めさせた。

「しからずんば死を」

ここで本当にカール、そして仲間たち現実に向き合った。そんなイメージを私は抱いた。

 

幕開きのロック調から始まりドイツ民謡、現実を見ているようで見ていない、そんなどこかふわふわしたところから一変、1幕はカールの決意で幕を閉じた。

 

 

【2幕】

群盗vs市民たちのダンスから始まる。

使われる曲が歓喜の歌であることが皮肉である。ここでもまいあちゃんはキレッキレだ。というかみんなめちゃくちゃイケてる。

 

命かながら逃げた先はボヘミアの森。

ギスギスした空気の中に突然現れるのはナニーロくん。つまりコジンスキーだ。彼はモール領の村長の息子で偶然にも彼の恋人の名もアマーリエ。彼から父は亡くなりフランツが酷い圧政を行なっている事を聞き、領地へ戻る事を決意する。

この事に複雑なのがリーベだ。そうだよな、気になる男が自分ではない女を助けに行くって聞いたら嫌だよな、分かるよ!!そして彼女は彼らと別れて姿をくらます……

 

一方モール城では、フランツとアマーリエがめちゃくちゃギスギスしてる。そうなるよな、うん。

順番が前後するが、アマーリエはフランツの事を"人の心が無い"と言う。しかしフランツはそうではないと返す。

彼もまた自分の父のように不器用なのだろう。一言ストレートに言えば伝わるのかもしれない、しかし言わない。やはり彼もモール伯爵の血を分けた息子だ。

 

そして息子は父親を幽閉している東屋へ向かい、気がおかしくなっている父に「水車小屋の娘を覚えているか」と聞く。鞘から抜いた剣を手にしながら。覚えていなければ殺すはずだったのだろうが、カールのことしか覚えていないはずの父は母親のことを覚えていた。

その時の気持ちはどこにもぶつけれなかったのだろう。その後のソロが圧巻だった。

私の知っている瑠風輝ではなかった。ひたすらに美しく、照明も相まって1枚の絵画のようだった。美しすぎて歌に関しては高音が綺麗だった、という記憶しかない。もう一度聞きたい。

 

その後、聖堂にいるアマーリエに対して「あなたのフランツはただ命令するだけですよ」と言う。この台詞が何とも言えない。彼はアマーリエが自分のものになるのは不可能だと知っているのだろう。でも彼女の事を愛している。切ないことこの上ない。

 

そうしたら帰ってきたカールの登場。最後の最後に帽子を投げるキキちゃんの格好良さったら半端ない。紺のお衣裳のキキちゃんと黒いレースのドレスのじゅりちゃん。もうビスクドールの様な美しさですよ、皆さん。

そして、「おかえりなさい、カール」にはずっとカールを待っていたアマーリエの想いの全てが乗っていた。

 

そしてフランツとアマーリエの結婚式に乗り込むカール。ここからがまるで濁流に飲み込まれるようだった。

 

悪者なんだけど、どこか悪者になり切れない部分があったフランツをヘルマンが大きく揺さぶり兄を殺すよう仕向ける。

更に、実の兄であるモール伯爵の元へ行き自ら手を下そうとする。一息に殺すのではなく自分の動かない脚と同じ脚を刺す。この行動にヘルマンの兄に対する羨望や憎悪、あらゆる思いが込められてるのだろう。それは、何故私の脚は曲がっている、何故私は貴方より先に生まれなかった、何故私は生まれたのか、という台詞にも同じことが言える。何と切なく苦しい台詞だろうか。伯爵家の次男、しかも脚が動かないという重荷(と表現します)を背負いどんな思いで今まで生きてきたのだろう。

そして極め付けは「私があなたでは無いからだ」という台詞だろう。この一言に全てが詰まっていた。

 

もう一度剣を振り上げ、とどめを刺した…と思えば、切った相手はフランツだった。

フランツは父親を幽閉したが殺しはしなかった。本当に憎んでいたらそこで殺しただろう。ヘルマンが剣を振り上げた時に父親を庇わなかっただろう。彼の咄嗟の行動が彼の心のままだった。弱々しく「父上…」という姿は私にはひどく幼く映った。

 

そしてカールはアマーリエの目の前でヘルマンを殺し、彼女自身をも殺した。彼女の願いだとしても。その後仲間に思いを託し、自らは犠牲となった。

カールがそれぞれに言った言葉はどれも重いがシュピーゲルベルクに言う「リーベを許してあげて」という台詞。リーベはきっと一生カールの居場所を教えた事を後悔しているだろう。崩れ落ちた時に床を叩いていたように。裏切り者と詰られてもおかしくない、そんな彼女を許してあげて欲しいというカールの願い。そしてそれに答えるシュピーゲルベルクの表情といったら。ここは涙が止まらなかった。

 

ナウオンで言っていたように、この結末は物語が悪い方悪い方へと動いた結果だ。でも彼らにはどうする事も出来なかったのだろう、必然だったのかも知らない。暗く重い内容だったが、ラストの皆んなが白いお衣裳を着てキキちゃんがその周りを回っていき歌詞に合った振りを踊る。このラストシーンがあったから救われた。そんな気がした。

 

【フィナーレ】

緞帳が上がり月光が流れる。

もえこ!あのとーっても下級生だったもえこがキラキラの多いお衣裳でセンターで男役を引き連れて踊っていた。格好よかった。

その後ろにはりんきらとこってぃ。

りんきらは流石の上級生。オーラが違った。

こってぃもキッチリと踊っていた。

 

歓喜の歌になると黒いドレスを着た娘役も加わる。まいあちゃんのスタイルの良さは本当に目立つ。はる香心ちゃんも美しかった。

 

そして堂々と出てくるキキちゃん。

余裕があった。MY HEROの時とは違う。立派な主演だった。(もちろんMY HEROも良かったのだが)

じゅりちゃんとのデュエットも息ピッタリでした。

 

下級生からお辞儀していき、並ばずにお芝居のようにばらけていく。その中ではる香心ちゃんの優しい笑顔といったら!りんきらと寄り添っていて嬉しかった。

 

 

初回からとんでもなく長くなってしまったが、それほどこの作品は素晴らしかった。

これからの宙組は安心して観ていれる。そんな気持ちになった。